国選付添人制度を弁護士が解説
(1)国選付添人と私選付添人の違い
国選付添人も私選付添人も,その職務や権限に違いはありません。しかし,国選付添人は国が選任する付添人であり,国選付添人名簿に登録された弁護士の中から自動的に割り当てられるという仕組みになっています。そのため,私選付添人のように,少年や,そのご家族が自ら弁護士を選択することはできません。また,現行法上,国選付添人対象事件は限定的であり,国選付添人が選任されるケースは極一部なのが現状です。
(2)国選で付添人が選任される対象事件
平成12年の少年法改正により,少年審判への検察官関与制度(少年審判に検察官が参加する制度)が導入されるに当たり,検察官関与事件は必要的付添事件とされ,私選付添人が存在しない場合には,裁判所が必ず国選付添人を選任することとなりました(少年法22条の3第1項)。
また,平成19年11月からは,①故意の犯罪により被害者が死亡した事件,②死刑又は無期もしくは短期2年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪の事件について,裁判所の判断で国選付添人を選任することができるようになりました(同法22条の3第2項)。
さらに,平成20年改正によって,被害者の審判傍聴制度ができたことに伴い,被害者が審判傍聴の申出をした事件について,少年に付添人が選任されていない場合には,必ず国選付添人が選任されるようになりました(同法22条の5)。
現行法上,国選付添人が選任されるケースは以上の通り限定的であり,付添人を付けるためには,積極的に私選付添人を選任するか,法律援助制度の利用を検討する必要があります。
(3)すぐに弁護士費用を用意できない場合の援助制度
国選付添人対象事件でないために国選付添制度を利用できない場合があります。また,国選付添人制度は勾留決定後に選任手続が始まるので,逮捕後,勾留決定までの72時間は,どの事件であっても国選付添人はつきません。ですから,これらの場合には私選付添人をつけなければなりません。
しかし,一方で,十分な資力がなく,私選で付添人を依頼することもできない場合には日本弁護士連合会の少年保護事件付添援助事業の利用が可能な場合があります。
この制度は,日本弁護士連合会の会費を財源として,家庭裁判所に送致された少年のために付添人活動を行う弁護士の弁護士費用を援助する制度です。ただし,事件終了後に費用を償還しなければならない場合があります。
なお,保護者が付添人選任に反対していても,少年本人が選任を希望している場合には,この制度の利用申込みが可能です。