触法少年について,手続きの流れや付添人ができることを弁護士が解説
こちらのページをご覧になっている方の中には「13歳の息子が窃盗事件を起こしてしまった」「14歳未満でも少年院に入れられてしまうのか」「弁護士をつけるべきなのか」このようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
14歳未満の少年が事件を起こした場合,成年事件とは全く異なる手続きで進んでいきます。
今回は触法少年について元検事の代表弁護士・中村勉が詳しく解説いたします。
触法少年とは
少年法では,家庭裁判所の審判に付される非行少年の中でも,14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年のことを「触法少年」としています(少年法第3条1項2号)。
刑法41条では,「14歳に満たない者の行為は,罰しない」と規定されていますので触法少年は処罰対象になりません。
触法事件の手続きの流れ
警察による調査
従来,14歳未満の少年には刑事責任能力がないため,これに対する捜査は許されないとされてきました。
しかし,少年事件の厳罰化を求める世論の声を反映し,2007年に少年法が改正され,14歳未満の少年に対しても,警察は調査を行うことができるようになりました(少年法第6条の2第1項)。
また,強制処分として,押収,捜索,検証又は鑑定嘱託をすることもできるとされています(少年法第6条の5)。
児童相談所への通告,一時保護
警察による調査の終了後,事件は児童相談所に通告されます。
また,警察官が家庭裁判所の審判に付することが適当であると判断した場合や,故意の犯罪行為により被害者を死亡させるなどの一定の重大事件の場合は,児童相談所長に事件が送致されます(少年法第6条の6第1項1号及び2号)。
触法少年は処罰対象になりませんので,逮捕・勾留されることはありませんが,児童相談所において一時保護として少年の身柄を拘束される可能性はあります。
一時保護は,児童相談所長が必要があると認める場合に,児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため,または児童の心身の状況,その置かれている環境その他の状況を把握するために行われます(児童福祉法第33条)。一時保護の期間は法律上は2か月と定められているものの,必要があると認められるときは延長が可能となっているため,相当長期化するおそれもあります。
家庭裁判所への送致
児童相談所が,触法少年を家庭裁判所の審判に付することが適当であると判断した場合や,一定の重大事件の場合には,家庭裁判所に事件が送致されます(児童福祉法第27条1項4号,少年法6条の7第1項)。
こうして家庭裁判所へ送致された後は,家庭裁判所調査官の調査を受け,少年審判が行われます(調査のみを行って,審判を開かずに終了となる審判不開始決定となったり,児童相談所長に送致されたりする場合もあります)。少年の審判を円滑に進めたり,心理検査や面接を行ったりすることなどが必要な場合には,「観護措置(少年鑑別所への送致)」がなされます。
少年審判
少年審判とは,本当に非行したかどうかを確認した上で,非行の内容や少年の抱える個別の問題性に応じた適切な処分を決定する手続のことです。
少年審判の結果,「保護観察」や「少年院送致」などの保護処分を受けることになります。触法少年のように低年齢層の場合は,少年院送致ではなく,「児童自立支援施設等送致」の決定がなされることもあります。
少年審判の流れや審判結果について,詳しくはこちらをご覧ください。
触法事件で弁護士ができること
触法事件では弁護士の助力が必要です
触法少年は逮捕や勾留をされることはありません。ただし,児童相談所による一時保護が決定して身体拘束を受ける可能性があります。また,一時保護の期間は法律上は2か月と定められていますが,延長が可能であり,期間の上限の定めがないため相当長期化するおそれもあります。
一時保護の期間中は自宅に帰れないだけでなく,両親との面会が制限される可能性もありますので,実質的には逮捕や勾留と同じなのではないかと感じる方も多いかもしれません。
このような一時保護による身柄拘束を回避するには早期の付添人活動が必要不可欠です。
弁護士(付添人)はどのような活動をするか
依頼を受けた弁護士は,付添人として活動します。少年がなぜ事件を起こすに至ったのか,どのような解決策があるのかを少年や親と共に考え,被害者がいる場合には示談交渉にも着手します。また,少年の周囲の環境調整を行うことも一時保護の回避には重要です。
具体的には,以下のような活動をします。
環境調整と早期解放
児童相談所と積極的に協議し,一時保護の早期解除,つまり,在宅調査への切り替えを説得します。そのためには,環境調整が何よりも必要です。両親とよく話し合い,もしその環境に問題があって,少年の躾・教育を放任してきたといった事実があるならば,両親に問題を自覚させると同時に,少年をも適切に指導して親子関係を修復改善させます。
そして,その成果を上申書や誓約書に反映して児童相談所に提出したり,少年本人の反省文なども提出して児童相談所を説得します。
また,就学状況に問題があったならば,学校の担任の先生や校長先生とも協議し,復学を含めた環境改善を行います。このことも報告書として児童相談所に提出するなどします。
鑑別所への入所阻止
このような環境調整は,一時保護期間の短縮のみならず,後に家庭裁判所に送致されたあとの手続きにおいても効果を発揮します。
例えば,家庭裁判所は事件送致を受けると,その当日に観護措置決定を行うことがあります。いわゆる鑑別所への入所です。いつ事件送致がなされるか前もって弁護士には知らされないので,弁護士は家裁に送致される前から準備をし,警察や児童相談所等から情報収集し,いつ家裁送致がなされるか注視します。
そして,まさに家裁送致のタイミングで,担当裁判官と面談し,先程述べた上申書,誓約書,反省文などを裁判官に提出して,少年鑑別所への入所を阻止するべく活動を行います。
警察による触法調査に対する監視,牽制活動
弁護士は,警察の触法調査が適正に行われるよう監視します。まだ未熟である少年は警察官の恫喝や誘導に弱く,警察に迎合して虚偽の自白をしがちで,それが冤罪に繋がります。弁護士は,常に少年から調査状況を聞き,問題があれば即座に抗議するなどして少年を守ります。
少年審判での活動
弁護士は,以上のような環境調整を実施し,調査の適正をはかった上で,少年審判の準備を進めていきます。少年本人も両親も少年審判手続には不慣れで,緊張しているので何度も打ち合わせし,審判準備を行います。
そして,少年審判の期日に出席し,少年院への入所は不要であり,社会の中で少年が更生できることを主張し,保護処分をしない(不処分),もしくは,不処分よりも軽い保護処分の決定を引き出します。
まとめ
触法少年であっても,児童相談所に一時保護されたり,少年院送致になったりする可能性はあります。少年の心身の負担を考えると,成人以上に弁護士のサポートを受ける必要性が高いと言えるでしょう。
中村国際刑事法律事務所は,少年事件の実績が豊富な弁護士が多数在籍しております。14歳未満のお子様が事件の加害者になってしまった場合はお早めにご相談ください。