少年事件における大麻事件|少年事件 弁護士サイト

少年事件における大麻事件

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少年事件における大麻事件

少年による大麻事犯は増加傾向

 警視庁による統計で2021年の大麻事件のうち,少年が占める割合が過去最多を更新したとのことで,近年における少年による大麻事件が増加の一途を辿っています。
 警視庁によれば,2021年の1年間に,警察が大麻事件で検挙した20歳未満の少年は前年比12.1%増の994人で,検挙された少年は就業者が502人と最多で,無職192人,高校生186人,大学生50人と続き,中学生も8人おり,性別は男性が896人,女性が98人だったようです。
 遡りますが,2021年3月に発表された警察庁集計結果(2020年分)によると,少年事件全体の事件数は減少傾向にあるにもかかわらず,少年による大麻事件は前年と比べて1.5倍も増加していました。
 「みんなやってるんだからお前も吸えよ」「先輩から貰ったからお前にあげるよ」など,ふとした会話から大麻を渡されたり,大麻を吸うなどの誘いを受けてしまうという事件が相次いでおり,少年の間に大麻の危険性が十分に認知されていないことなどが増加の要因とみられます。
 大麻取締法違反のような薬物犯罪は,少年が薬物に対して危険性をあまり理解していない場合も多いため,まず少年自身が薬物に対する正しい知識を持ち,薬物の危険性を十分に理解することが重要です。
 特に,よく見られるのは,大麻が諸外国で合法とされていることなどを理由として,薬物は「安全」などと安易に考え,自己の行為を正当化して反省しない場合です。このような考え方は,誤った知識を前提にしていますし,少年が薬物犯罪だけでなく他の犯罪を自分の勝手な理由によって正当化することに繋がるものですので,厳しく正していかなければなりません。
 また,インターネットの普及により,「安全合法」などの謳い文句で手軽に大麻などの違法薬物を注文したり,売人と繋がってしまうというケースもあります。
 このように大麻の危険性が日常的に蔓延している今,未成年者が大麻事件を犯してしまったら逮捕されるのか,その後どうなるのかなど,弁護士が解説します。

大麻取締法違反とは

 まず,大麻を所持することは違法です。また,大麻を譲り渡す,大麻を譲り受けることも違法です。その他,栽培,輸出入も違法となります。
 これらの行為はいずれも大麻取締法違反となり,営利目的(販売して利益を得ようとするなどの目的)がある場合には法定刑が加重されます。

大麻取締法 第24条

 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
 2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
 3 前二項の未遂罪は、罰する。

大麻取締法 第24条の2

 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
 2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
 3 前二項の未遂罪は、罰する。

大麻取締法違反の刑罰

 大麻取締法に違反した場合の主な刑罰は以下の通りです。

  • 自己使用目的での所持や譲受などの場合: 5年以下の懲役
  • 営利目的での所持や譲受などの場合: 7年以下の懲役+情状により200万円以下の罰金が併科
  • 自己使用目的での栽培や輸出入の場合: 7年以下の懲役
  • 営利目的での栽培や輸出入の場合: 10年以下の懲役+情状により300万円以下の罰金が併科

大麻取締法で禁止される「大麻」とは

 大麻取締法は,大麻草全体を規制対象にはしていません。
 大麻取締法第1条によると,「成熟した茎や種子」は規制対象から除くとされています。この趣旨は,大麻草全体に有害な物質が含まれているわけではない点にあります。
 大麻には,CBD(カンナビジオール)THC(テトラヒドロカンナビノール)などの成分が含まれます。このうち,幻覚作用等の有害作用を人体に及ぼすのはTHCという成分です。これはマリファナの原料にもなっています。具体的には,強い快楽感を得ることができる一方で,離脱時には重度の倦怠感を伴います。更に,依存性・中毒性が高く,場合により,強い幻覚症状や記憶障害を引き起こしながらも大麻を止められないという悪循環に陥ってしまいます。
 このTHCは,大麻草の樹液に多く含まれます。したがって,大麻草の花や葉っぱにはこの樹液が多く含まれているのです。
 これに対し,成熟した茎や種子にはTHC成分はほとんど含まれていません。また,日本では古来から大麻草を利用してきた文化があり,現に山林や平原などに野生の大麻草が自生していることもあります。そのために,「成熟した茎や種子の部分は有害性がほとんどない」として規制対象からは外されたのです。

 また,令和4年3月17日から,HHC(ヘキサヒドロカンナビノール)が指定薬物として規制の対象となりました。HHCは大麻にわずかに含まれている,精神活性作用を有する成分を合成したものです。指定薬物は,医療等の用途を除き「製造,輸入,販売,授与,所持,購入,譲り受け,使用」が禁止されています(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第76条の4)。大麻取締法とは別の法律で処罰されることとなります。
 HHCは先日まで規制の対象ではなかったことから,違法だと知らずに友人から譲り受けるなどして摘発されるケースが,成人・少年を問わず増えています。

大麻の茎や種は合法なのか,使用のみなら合法なのか

 では,先輩や知人から「大麻の種だからセーフだよ」「大麻の所持は犯罪だけど使用は犯罪ではないから,使うだけなら逮捕されないよ」などと言われて手渡されたり使用することは「合法」なのでしょうか。
 結論から言うと,このような誘いを受けても断固として拒否するべきです。
 確かに,大麻取締法は「使用」を対象にはしていません。その理由は,規制対象外とされている成熟した茎や種にも微量にTHC成分が含まれている場合があるため,使用して尿検査が陽性反応を示しただけでは,成熟した茎や種によるものか,それとも乾燥した葉などの規制対象となる大麻によるものか,特定が困難なためです。
 しかし,裏を返せば,尿から大麻成分の陽性反応が出た場合には,大麻使用のための大麻所持や,大麻譲り受け,大麻譲り渡しといった禁止行為と密接にかかわっている場合がほとんどといえます。
 したがって,大麻の使用自体が罪でなくとも,所持,譲受,譲渡により,逮捕や処罰の対象となる可能性が高いでしょう。

少年が大麻事件を起こすと逮捕されるのか

 少年が大麻事件を起こした場合,成人と同様,逮捕される可能性があります。
 大麻取締法違反で逮捕されるケースには,警察官の職務質問などによって所持が判明し,その場で現行犯逮捕されるという場合があります。また,後日の捜査や告発などによって大麻の所有者を特定され,後日,捜査機関が自宅を訪問するなどして,逮捕状により通常逮捕される場合もあります。
 少年については,成人の場合と異なり,「やむを得ない場合」を除いて勾留することができないことになっていますが(少年法43条3項),実務の肌感覚としては,少年であれば逮捕されにくいということはなく,捜査機関や裁判所は少年であっても成人と同じような基準で逮捕・勾留を行っているように感じます。
 大麻事件は軽い罪ではなく,共犯者がいたり,入手先を捜査する必要などからほとんどのケースで勾留がなされます。勾留されると最低10日間拘束され,学校生活にも重大な影響が出てくるうえ,次に述べる観護処置(少年鑑別所への入所)によってさらに一か月もの長期拘束となる可能性が高くなります。

少年が大麻事件を起こすと少年鑑別所に入るのか

 大麻のような薬物犯罪は依存性・中毒性が高いため,少年の再非行の可能性が高いといえます。
 また,親の監督能力や家庭環境にも問題があることもあって,家庭裁判所に事件が送致された後,少年鑑別所に留置される観護措置が採られる可能性が高いといえるでしょう。

少年による大麻事件の弁護士活動・付添人活動

 少年が逮捕された場合に,可能な限り身柄拘束をさけるという弁護方針は,成人の場合と同様です。特に,逮捕された場合でも勾留されないような活動は必須です。
 もし身に覚えのない冤罪であれば,可能な限り早い段階から無罪(冤罪)の主張活動に着手する必要があります。
 一方で,身に覚えがある場合,再犯防止の方策を検討します。大麻をはじめとする薬物犯罪は,再犯率が非常に高いという特色があります。違法薬物の有する依存性・中毒性により何度も繰り返してしまうのです。
 また,一度「薬物仲間」ができてしまうと,コミュニティから離脱することが困難となり,止めたくても止められない状況に陥ってしまうおそれもあります。
 弁護士は,少年に反省とやり直しの機会を与えるために,可能な限り軽い処分とすることも活動の中心となり,少年院入所を回避することもその一環です。そのためには,薬物犯罪の場合,薬物の依存性を自覚した上で専門的な治療を要するため,専門医療機関への通院なども必要になるかもしれません。
 さらに,大麻事犯においては,入手したルートや交友関係を断ち切ること,大麻購入の資金源を断ち切ることなども非常に重要になってきます。そのため,少年の交友関係や少年の生活圏・活動場所などを制限していくこと,少年の貯金などに関して親が監視・管理することなどが求められます。
 このようなことを徹底することができれば,少年の再非行の可能性が減少するといえるので,保護観察処分にとどまる可能性が高くなるといえるでしょう。そのような結果に導くために弁護士は最善の活動に努め,少年及びその家族のサポートをしていきます。

少年が大麻事件を起こすと前科となるのか

 少年事件においては,非行は原則として家庭裁判所による審判の対象となります。そのため,成人事件が裁かれる刑事裁判所による刑罰の対象とはなりません。そのため,厳密に言えば,前科にはなりません。
 しかし,捜査機関の保有するデータベースには「前歴」としての記録が残ることになります。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。大麻などの薬物事件は,早期の段階から弁護士に相談すべきです。
 この種の事案にあっては,初動の対応が最も重要です。大麻が自己の健康を破滅に導くだけでなく,他人を傷つける危険を有するものであること,家族を精神的にも経済的にも破壊するものであることなどをしっかりと植え付けなければなりません。捜査に従事する捜査官は,証拠を収集するだけの捜査官が多く,本人の将来を案じて説諭をする捜査官は希少です。そのために,まずはご家族が事態を深刻に受け止め,本人と接する覚悟が必要となります。
 当事務所は,多くの大麻事案を扱っておりますが,早期釈放を追求し,可能な限りの寛大なる処分を求めるための弁護活動・付添人活動に従事するのみならず,大麻犯罪に至った原因を,生活環境,生活態度,交友関係から洗い出し,二度と同じ過ちを犯さないよう,更生のための助言を積極的に行っております。
 また,大麻断絶のための専門医療機関やボランティアグループの情報を提供し,大麻断絶を図るための様々な選択肢について,ご家族の皆様と一緒に考えていくことで,目先の少年審判のより良い結果を求めるだけでなく,ご本人やご家族のあるべき姿に寄り添い,ともに歩んでまいります。


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