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少年による万引き事件で,保護観察処分を獲得

 大学生の少年が,高校の同級生らとともに,換金目的のために健康食品を万引きしようと計画し,県外の小売店を10店舗ほど回り,被害金額が数十万円程度に上る窃盗に及んだ事例です。

 捜査段階では被害店舗がある他県の弁護士が弁護人に選任されていましたが,家庭裁判所送致後に少年の住所地に移送されたことで弊所の弁護士が付添人に選任されました。
 少年は通常逮捕され家庭裁判所に送致された際に観護措置決定となりました。換金目的という動機,被害点数,被害金額から犯情面は重く,他の単純な万引き事件とは異なり弁護士は非行の背景を見定める必要がありました。
 また,送致された非行事実は1件のみでしたが,他の9店舗分の余罪も合わせて一件記録上に現れており,送致時において被害弁償未了の店舗もありました。
 弁護士は付添人活動として,被害弁償未了の店舗との間で被害弁償を完了させること,通常の万引きとは異質であり少年自身に本件窃盗被害の重さを認識すること,同級生の誘いに断り切れなかった原因を分析すること,スポーツ推薦で大学入学するなどこれまで真面目に部活動に取り組んできたこと,大学在学中も勉学に励んできたこと等を主張することにより,保護観察処分を目指しました。

 弁護士は家庭裁判所送致後直ちに観護措置決定に対して異議を申し立て,さらに大学の授業期間が開始してからも観護措置取消しを申し立てましたが,換金目的の非行であること,共犯者が存在すること,被害金額が大きいこと,本件と同様の窃盗余罪が過去にも認められることなどから実現されませんでした。
 被害弁償未了の被害店舗については,共犯者の付添人と足並みを揃えつつ厳重処分を望まない内容で実現できました。
 少年は,家庭裁判所送致当初は被害を受けた店舗の状況に対する視点がやや不足し少年鑑別所の意見にも同様の指摘がありました。しかし,付添人面会を通じてこれまでの窃盗歴を全て付添人に打ち明けて非行の背景を振り返り,被害店舗の経営状況や従業員の視点についての認識を持ち始めることができるようになりました。
 少年を取り巻く環境については,真面目に大学やアルバイト生活を送ることが期待できること,良好な家族関係を再構築しつつある点が家庭裁判所調査官の意見にも反映されることとなり,保護観察処分で終結しました。

 少年事件であっても,共犯事件,換金目的,余罪多数の場合,警察も家裁もかなり厳しい対応をしますので,逮捕も観護措置も不可避の事案です。
 非行傾向が根深かったり反省の態度が浅かったりするときには,鑑別所意見のとおり厳しい処分,最悪,短期の少年院もあり得る事案でしたが,弁護士や家族など周囲の関係者が深刻に受け取り,本人も悔悟の情が認められたことを裁判官が評価して保護観察処分に留まった事例でした。

執筆者: 代表弁護士 中村勉


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