未成年の子供が傷害・暴行で逮捕されたら – 少年事件に強い弁護士が傷害・暴行の弁護活動や示談を詳しく解説
お子様が突然、傷害や暴行の容疑で警察に連行されたという知らせを受け、パニックに陥っていないご家族はいません。警察から「息子さんを逮捕しました」と連絡があっても、詳しい事情は教えてもらえず、会うことさえ制限されるのが一般的です。
少年事件は、成人の事件とは異なる独自のルールや手続きを定めた「少年法」に基づいて進められます。そのため、「子供だからすぐに帰してもらえるだろう」という安易な見通しは危険です。
傷害・暴行事件では少年の約半数が逮捕され、そのうち9割以上が勾留されるという厳しい現実があります。さらに、18歳・19歳の「特定少年」であれば、重大な事案において実名報道がなされたり、成人と同じ刑事裁判を受ける「逆送」のリスクも高まります。
本記事では、少年の傷害・暴行事件に強い弁護士が、少年事件における傷害・暴行事件の概要や流れ、弁護活動、また解決の鍵となる示談交渉について詳しく解説します。
統計に見る少年による傷害・暴行事件
日本の少年非行は長年減少傾向にありましたが、近年、その流れに変化が生じています。
少年による刑法犯検挙人員の推移
刑法犯少年の検挙人員は、平成22年から12年連続で減少していましたが、令和4年から増加に転じています。
| 年次 | 刑法犯少年 検挙人員 | 前年比増減数 | 少年人口比(1,000人当たり) |
|---|---|---|---|
| 令和2年 | 17,466人 | – | 2.6 |
| 令和3年 | 14,818人 | – | 2.2 |
| 令和4年 | 14,887人 | +69人 | 2.3 |
| 令和5年 | 18,949人 | +4,062人 | 2.9 |
| 令和6年(暫定) | 21,762人 | +2,813人 | 3.3 |
出典: 令和6年中 少年育成活動の概況 – 警視庁(https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/jokyo_tokei/kakushu/hiko.files/hikou.pdf)
粗暴犯(傷害・暴行)の急増
特に「粗暴犯」と呼ばれる傷害や暴行の分類では、令和6年の暫定値において大きな伸び率を記録しています。
| 罪種 | 令和6年検挙人員(暫定) | 令和5年検挙人員 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 暴行 | 1,052人 | 875人 | +20.2% |
| 傷害 | 2,282人 | 2,058人 | +10.9% |
| 傷害致死 | 14人 | 8人 | +75.0% |
出典: 令和6年中 少年育成活動の概況 – 警視庁(https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/jokyo_tokei/kakushu/hiko.files/hikou.pdf)
統計から分かる通り、少年による暴力トラブルは現在進行形で増加傾向です。SNSを通じた人間関係の歪みや、コロナ禍以降のストレス発散の形の変化が、暴力行為へと発展しやすい土壌を作っている可能性が示唆されています。
少年における傷害罪・暴行罪の法的な定義とは
弁護士としてまずご家族に理解していただきたいのは、お子様がどのような罪に問われているのかという正確な定義です。
暴行罪(刑法208条)
暴行罪は、他人の身体に対して不当な有形力を行使した際に成立します。これは、相手を殴る・蹴るといった直接的な暴力だけを指すのではありません。胸ぐらをつかむ、突き飛ばす、あるいは当たらなくても相手に向かって物を投げつける行為も暴行とみなされます。最近では、煽り運転による進路妨害や急ブレーキも、乗員に対する暴行罪として立件されるケースがあります。
傷害罪(刑法204条)
暴行によって相手が怪我を負った場合、傷害罪となります。法律上の「傷害」とは、出血や骨折などの外傷だけでなく、嫌がらせ等によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)といった精神的な機能障害も含まれます。
傷害致死罪(刑法205条)
殺意はなかったものの、暴行の結果として相手を死に至らしめてしまった場合は傷害致死罪が適用されます。この罪は、3年以上の有期拘禁という非常に重い刑罰が定められており、少年であっても原則として検察官へ逆送され、成人と同じ刑事裁判(裁判員裁判)を受けることになります。
逮捕から少年審判まで – 家庭裁判所へ至るまでの流れ
少年事件が成人の事件と大きく異なるのは、最終的に家庭裁判所が「保護」の観点から処分を決める点です。しかし、そこに至るまでの警察・検察による捜査は、成人と同じように厳しく行われます。
逮捕直後の初動の72時間が重要です
逮捕されると、警察は48時間以内に検察官へ身柄を送らなければなりません。検察官はその後24時間以内に、引き続き拘束を続ける「勾留」を裁判官に請求するかを判断します。この合計72時間の間は、たとえ親御様であっても、お子様に面会することは原則として認められません。このような環境下では、少年が捜査官の誘導的な質問や心理的な影響を受けやすくなり、その結果、自身に不利な内容や事実と異なる供述が調書として作成されてしまう可能性があります。
勾留と観護措置 – 長期化する身柄拘束
裁判官が勾留を決定すると、さらに10日間(最大20日間)、警察署の留置場に拘束されます。その後、全ての少年事件は家庭裁判所へ送られますが、ここで裁判官が「鑑別が必要である」と判断すれば、観護措置が決定され、少年鑑別所に収容されます。 観護措置は通常4週間続き、逮捕から合わせると、審判が終わるまで2ヶ月近くも、学校や日常生活から切り離されてしまうことになります。
少年事件における傷害・暴行の「示談交渉」とは
裁判官が審判を行う際、「被害者が許しているか(宥恕)」も判断要素となります。成人の場合ほど被害者の意向が結果に影響を及ぼすことはありませんが、示談交渉が重要な弁護活動であることに変わりはありません。
「要保護性」の減少を証明する
少年審判では、行った行為の重さだけでなく、「またやる可能性があるか(要保護性)」が厳しく問われます。弁護士を介して被害者に真摯に謝罪し、示談を成立させることは、単なる金銭解決ではありません。それは、少年が自らの過ちを深く内省した証拠であり、また保護者が少年を監督し、責任を持って被害弁償を行う能力があることを裁判所に示す活動なのです。
示談交渉の具体的な流れ
被害者は、加害者である少年やその家族に対して強い恐怖や怒りを感じていることが多いため、家族が直接連絡を取ることは逆効果になる場合がほとんどです。
連絡先の入手
弁護士(付添人)が捜査機関を通じ、被害者の承諾を得て連絡先を確認します。
真摯な謝罪
弁護士が少年の反省文や家族の上申書を携えて被害者と面談し、誠実な謝罪を伝えます。
条件の調整
今後の接触禁止、特定の場所(通学路など)の回避といった、被害者の安心を守るための具体的な約束を盛り込みます。
宥恕(ゆうじょ)文言
示談書に「処罰を望まない」という言葉を入れていただくことで、不処分や保護観察といった寛大な決定を得られる可能性が高まります。
未成年同士の示談における注意点
傷害・暴行事件の被害者が未成年である場合、交渉の相手は被害者の両親(法定代理人)となります。親同士の感情的な対立を防ぎ、冷静に「子供たちの将来」を見据えた解決を図るためには、経験豊富な弁護士による介入が肝要です。
特定少年(18歳・19歳)が負う社会的リスク
2022年4月の法改正により、18歳・19歳は「特定少年」とされました。彼らは17歳以下の少年よりも厳しく扱われます。
逆送対象の拡大と実名報道
傷害致死事件については、その罪を犯したときに16歳以上であれば、原則として検察官へ逆送され、成人と同じ刑事裁判を受けることになります。また、傷害事件であっても、悪質と判断された場合には検察官へ逆送されることになりますが、その判断の際には、少年の年齢も考慮されますので、年長である特定少年は、逆送される可能性も相対的に高くなります。さらに、特定少年については、起訴された段階で実名や顔写真の報道が解禁されるため、インターネット上にデジタルタトゥーとして一生消えない傷が残るリスクが生じます。
当事務所の少年事件の傷害・暴行事案の解決実績
当事務所は、これまで数多くの少年の傷害・暴行事件を解決してきました。一部をご紹介します。
学校内での暴行・傷害事件(保護観察処分)
ADHDの特性を持つ少年が、校内で生徒に暴行を加え、さらに仲裁に入った教師に怪我を負わせ、逮捕された事例です。
専門医から発達障害に関する診断書を取得し、継続的な治療が可能な環境を整備しました。あわせて、被害生徒の両親との間で示談を成立させ、学校側とも3回にわたり面談を行い、復学に向けた受け入れ体制を整えました。
少年院送致が妥当であるとの意見が出ていましたが、弁護士による環境調整の取り組みが評価され、家庭内での更生を目指す保護観察処分となりました。
泥酔状態での駅員への暴行(不送致・早期解決)
飲み会帰りの少年が、タクシー運転手や駅員とトラブルになり、暴行を加えたとして警察に呼ばれた事例です。
依頼者が事件当時の記憶を失っていたため、弁護士が警察と折衝し、事実関係を丁寧に把握しました。その後、速やかに被害者へ連絡を取り、真摯な謝罪と示談金の支払いを完了させました。
被害者の処罰感情が和らぎ、事件化から数日で示談が成立しました。その結果、警察が捜査打ち切りを決定し、検察へ送致されない不送致(不立件)で終了しました。
強盗致傷からの罪名変更(保護観察処分)
ひったくりの際に被害者を転倒させ負傷させたとして、強盗致傷の容疑で逮捕された事例です。
少年には強い暴行の意図はなく、あくまで窃盗目的であったことを法的観点から主張しました。粘り強い交渉の結果、検察官は強盗致傷ではなく、より軽い窃盗未遂罪として家庭裁判所に送致しました。
観護措置を回避して釈放され、最終的に短期の保護観察処分で終結しました。
少年や未成年による傷害・暴行事案に関するよくあるご質問
逮捕された子供といつ会えますか?
逮捕直後の最大72時間は、たとえ親御様であっても原則として面会は認められません。この期間、お子様に会えるのは弁護士だけです。勾留が決定され、接見禁止が付かなければ、平日の日中、15分程度の面会が可能になります。弁護士であれば、休日や夜間であっても、立会人なしで時間制限なく接見が可能です。
少年鑑別所には必ず入るのでしょうか?
法律上は「審判を行うために必要があるとき」に限られます。重大な事件や証拠隠滅の恐れがある場合に収容されますが、弁護士が「家庭での監督体制が万全である」、「すでに内省が相当程度深まっており、鑑別所で資質鑑別を行わなくても家庭裁判所に出向く形での調査でも足りる」ことを証明できれば、自宅から家庭裁判所に通う「在宅での調査」で済む可能性もあります。
学校に知られずに手続きを進めることはできますか?
警察・学校相互連絡制度により、逮捕された場合は学校に通報されるリスクが高いです。しかし、逮捕を免れて在宅捜査となった場合や、弁護士が警察へ「学校連絡を控えるよう」求める意見書を出すことで、連絡を回避できた事例も存在します。
少年審判の結果、前科がつきますか?
少年審判で下される保護処分(保護観察、少年院等)は刑罰ではないため、「前科」ではなく「前歴」として扱われます。これにより、将来の就職や資格取得に法的な制限が生じることは原則としてありません。ただし、逆送されて成人の刑事裁判を受けた場合には前科がつきます。
相手も手を出してきた「喧嘩」なのに、わが子だけが捕まるのは納得いきません。
警察の捜査では、怪我の程度が重い側を「被害者」、軽い側を「加害者」として扱い、捜査が進められることがあります。そのため、双方が手を出している「喧嘩」であっても、一方のみが逮捕・送致されるケースは珍しくありません。もっとも、相手も暴行を加えていた事情がある場合には、こちらからも被害届を提出することや、示談交渉においてその事情を交渉材料とするといった対応が有効となる場合があります。なお、相手の攻撃を避けるためのやむを得ない反撃であったと証明できれば、正当防衛として無罪や不処分を主張できる可能性がありますが、その立証には専門的な弁護活動が必要です。
示談金の相場はどのくらいですか?
怪我の程度や通院期間によりますが、少年の傷害事件では数十万円程度で合意することが多いです。ただし、少年事件の示談において重要なのは「金額」よりも、加害者である少年と家族がどれだけ誠実に謝罪し、再犯防止策(引越しや通学路変更など)を提示できるかという「中身」です。
酔って記憶がない場合でも処罰されますか?
はい、原則として責任能力は認められ、処罰の対象となります。ただし、あまりに著しい酩酊(病的酩酊など)で、自分の行動を制御できない状態であったことを示せれば、減軽や不処分の要因になることもあります。
特定少年(18歳・19歳)の場合、刑務所に行く可能性がありますか?
あります。特定少年が重大な傷害事件(強盗致傷や傷害致死など)を起こして検察官に逆送された場合、成人と同じ刑事裁判が行われ、実刑判決が出れば少年刑務所や成人と同じ刑務所に収容されます。
弁護士(付添人)を依頼する費用はどのくらいですか?
事案の難易度や逮捕の有無によります。当事務所では契約前に費用を明記し、不当な追加請求はいたしません。
子供が「やっていない」と言っています。信じていいのでしょうか?
少年は警察の厳しい取調べに対し、その場を逃れるために嘘をついたり、逆にやっていないのに「やった」と認めてしまうことがあります。まずは弁護士を派遣し、客観的な証拠(防犯カメラや目撃証言)と照らし合わせ、少年の本当の言い分を整理することが、冤罪を防ぐために重要となります。
まとめ – お子様の未来を守るために
私たちは、単に「刑を軽くする」ことだけが弁護士の仕事だとは考えていません。少年事件において最も大切なのは、お子様が自らの行為が被害者にどのような苦痛を与えたかを真に理解し、「二度と同じ過ちを繰り返さない」という確固たる土台を作ることです。そのことが、結果的に少年手続においてよい結果を得ることにつながります。
- 答えを教えるのではなく、共に考える: 少年が自分の言葉で深く振り返りができるよう、私たちは何度も接見を重ね、対話を続けます。
- お子様一人ひとりに合わせた環境調整: 家族の絆を修復し、必要に応じて学校や職場への働きかけを行い、お子様が安心して立ち直れる「帰る場所」を調整します。
- 専門機関との強力なバックアップ: 暴力の原因に精神的な不調や発達障害が疑われる場合、専門クリニックをご紹介し、治療を通じた更生をサポートします。
「まだ若いから大丈夫」と過信せず、お子様の将来が奪われる前に、少年事件の経験豊富な弁護士へご相談ください。


