特定少年について

 「少年法が厳罰化される」などのニュースを目にしたことはあるでしょうか。
 令和3年4月20日,少年法の改正案が衆議院で可決されました。
 今回の改正案では,18歳・19歳の少年を「特定少年」とし,刑事裁判化される事件類型が増え,実名報道が可能となる等,実質的な厳罰化が図られています。この法案が今国会で成立すれば,来年4月に施行が予定されている成人年齢を18歳に引き下げる改正民法と同時に施行される方針です。
 では,具体的にはどのような内容となっているのでしょうか。以下,ポイントを解説します。

特に注目される2つのポイント

 主に特定少年に関して注目すべきなのは,いわゆる逆送致対象事件の拡大と,逆送致後起訴されると実名報道や推知報道が可能となる点です。

いわゆる逆送致対象事件の拡大

 そもそも少年法は,20歳未満の「少年」による事件の終局処分は,検察官ではなく原則として家庭裁判所が行うこととされています。これを全件送致主義といいます。全件送致主義の目的は,少年の保護と更生にあります。
 もっとも,法に規定された対象事件のうち,家庭裁判所が「刑事処分相当」と判断した場合には,さらに検察官へ事件を送致するという,いわゆる検察官逆送の扱いとなります。

 今回の改正案では,逆送対象事件として,従来規定されていた,殺人や傷害致死などの故意に人を死亡させた罪に加えて,新たに,強盗や強制性交,放火などの,下限が1年以上の懲役・禁錮の罪が追加されました。

実名報道等の改正

 少年の実名や本人と推定できる情報の報道は,現行法では禁止されています(少年法61条)。
 この目的も,少年の健全育成を期するという少年法の目的(少年法1条)と軌を一にします。
 これに対し,改正案では,特定少年による事件が起訴された場合は,現行法の記事等掲載禁止の条文(少年法61条)の適用を除外する条文が新設されました。これにより,特定少年による事件が起訴された際には,その実名などの報道が可能となることとなりました。

その他の主な改正点1:特定少年に関する処分の新設

 保護処分について,特定少年については,新たに,犯罪の重要性を考慮して,原則として以下の3種類の処分のうちいずれかをしなければならないものとする規定が新設されました。

 1. 6ヶ月の保護観察所の保護観察
 2. 2年の保護観察所の保護観察
 3. 3年以下の少年院送致

その他主な改正点2:同行状の要件緩和

 改正案では,家庭裁判所からの呼出に応じない者などへ発する同行状の発行要件が緩和されています。

 (現行法)応じない者のみ
 (改正案)応じない者だけでなく,応じないおそれのある者も対象に含む

改正民法との比較

 冒頭で述べた通り,改正民法において来年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
 したがって,改正少年法が成立した場合には,18歳と19歳は民法上「成人」となる一方,少年法では「特定少年」として一定程度保護されることになります。

今後の動き

 法務省は,改正少年法について,施行後5年を経過した時点で,執行の状況や社会情勢,国民意識の変化等を踏まえ,18歳・19歳の法的処遇等につき再検討を行い,必要に応じて見直すとしています。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。今回は少年法の改正案や改正民法との比較などについて解説しました。民法上だけでなく,少年法上も,来年4月から18歳・19歳をめぐる法的地位に変化が生じる可能性がありますので,今後の動向が注目されます。

「少年事件」に関連する記事

少年事件を起こしたら弁護士を付けるべき?弁護人や付添人の役割とは

少年事件を起こしたら弁護士を付けるべき?弁護人や付添人の役割とは  「我が子が少年事件を起こした」「弁護士を付けた方がいいのか」等のお悩みを抱えていらっしゃいませんか。  今回は,少年事件を起こしたら弁護士を付けるべきか,弁護人や付添人の役割などにつ ...

READ MORE

少年事件を起こしたら少年院に行くのか?審判結果の3種類について

少年事件を起こしたら少年院に行くのか?審判結果の3種類について  「少年事件を起こしたら少年院に行くのか」「少年院に行くのはどんなときか」「少年審判って何をするのか」などの疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。  今回は,少年事件を起こしたら少 ...

READ MORE

少年事件は逮捕される?審判までの流れ

少年事件は逮捕される?審判までの流れ 息子が逮捕されてしまった 留置施設に面会に行けるのか,差入れはできるのか 逮捕されると今後どうなるのか  上記のようなお悩みを抱えていませんか。  少年事件の早期釈放や真の事案解決には弁護士の力が必要となります。 ...

READ MORE

少年事件における大麻取締法違反

少年事件における大麻取締法違反  「みんなやってるんだからお前も吸えよ」「先輩から貰ったからお前にあげるよ」など,ふとした会話から大麻を渡されたり,大麻を吸うなどの誘いを受けてしまうという事件が相次いでいます。  また,インターネットの普及により,「 ...

READ MORE

少年事件では示談は意味がない?少年法の目的とは

少年事件では示談は意味がない?少年法の目的とは  「我が子が少年事件を起こしたが,示談する必要はあるのか」「示談は自分たちで進めれば良いのではないか」といった質問を受けることがよくあります。  少年事件においては,示談交渉を試みることは不要なのでしょ ...

READ MORE